COLUMNコラム

視覚的にも体感的にも心地よい

空間全体を暖める

かつての住宅は、「採暖(暖を採る)」によって寒さを凌ぎました。寒い中にストーブや炬燵を置いて暖かさを感じるというもので、寒さと暖かさは室内に共存していました。現在は、建材や工法を含めた住宅全体における性能の向上に伴って、寒さが絶え間なく入り込んでくる住宅はほとんどなくなり、「暖房(房を暖める)」ができるようになっています。室内をある温度に保つことができるようになりましたから、家の中の寒くなりやすく暖房的に弱い場所へ対策をして、効率的に寒さを取り除こうとする方向に転換しています。

暖かさ、心地よさ

お客様から「温度計では23度なのに寒い、寒く感じる」と度々お聞きすることがあります。体感温度の話です。体感温度とは空気の温度と周辺の壁・床・天井など、自分を包み込むさまざまなものから受ける放射熱の平均値ですので、空気の温度だけで測ることはできません。空気の温度が上昇して、その後に壁、床、天井などが暖まるため、温度計が23度であっても壁や床が冷たければ寒く感じたりするものです。また湿度が適度にあれば暖かく感じ、湿度が低ければ乾燥して不快な気持ちにもなります。

ライフスタイルに応じて

ライフスタイルが多様化していることによって、働き方はもちろんのこと、家の中での過ごし方、住宅の使い方も多様化していると思います。共働きで日中は誰もいないというご家庭も珍しくありません。在宅でお仕事をされているお客様もいらっしゃいます。そうすると欲しい暖かさや心地よさも個々で違ってくるはずです。家族で集うリビングと、お布団を纏う寝室での求める暖かさが異なるように、空間によっては微妙な温度差があっていいと思います。暖かければ暖かいほどいいわけではなく、むしろ体感的にも視覚的にも心地よいと感じられる方が、快適に過ごせるのではないでしょうか。住宅の中で窓は暖房的に弱い場所ですが、心地よさを感じるためには大切な場所のはず。窓から熱量が損失するからといって、その向こうに見える素敵な風景を邪魔するように大きなラジエーター(ヒーター)を設置するのは、勿体無いと感じます。暖かさを求めるときには、心地よさ・快適さというのがやっぱり大切だと思うし、気持ちの良い暖かさは視覚的にも体感的にも、ほどよいバランスの上に成り立っていると思うのです。


インタビュー協力
弘田七重さん
ピーエス株式会社
https://ps-group.co.jp