COLUMNコラム

紀伊の国から小樽

株式会社新宮商行 木材部銭函工場工場長 小西茂雄さま
株式会社新宮商行 木材部銭函工場生産課課長 大居崇さま

1901年和歌山の利光小三郎(のちの新宮商行初代社長)は、和歌山県新宮に開校される県立中学校建築の競争入札を落札した際、良質な建築資材を探していたところ坂口茂次郎(後の2代目社長_新宮の生まれ)を紹介され、意気投合した2人の手によって1901年12月に完成しました。この時、利光小三郎と坂口茂次郎は25歳です。

1904年秋、坂口茂次郎が利光小三郎に2人の男を引き合わせます。
当時、新宮木材卸売組合の初代組合長であった植松新十郎と英語に堪能だった木材仲買業の阪井弥三太。ほどなくこの4人は将来の希望について語り合い、それぞれに共通する木材を軸にした事業構想を語り合ったと言います。
折しも鉄道網の発達に伴って、秋田・青森地方から安価な官民材が出回るとともに紀州材の人気が低落していました。加えて過当競争によって利が薄くなってきた時期と重なり、「紀州材はもう国内の競争に勝てない」「国内だけを相手にしていたのでは大きな成果は期待できない」「いまこそ外地へ飛びだして新天地を開拓すべき」「それは韓国だ」と4人は野望に燃えました。

1906年韓国の仁川で会社を興して、翌1907年韓国鉄道院から鉄道枕木30万本の受注に成功します。この受注が新宮商行飛躍の契機となり、1906年8月に韓国仁川に本拠を設立し、さらに北海道産の枕木用木材を買い付けるために流通至便のよい港町小樽へ1919年に本社を移し、今日の発展へと繋がります(現在の本社は東京、小樽は本店)。

1925年銭函に合板工場を建設しました。現在の銭函工場です。
この後、ナラ柾目、板目合板が好評で、工場は海外からの注文に応じられないほどの盛況ぶりであったと言われています。

森を育み、木を活かす

新宮商行では5000haの山林を所有しています。その山林経営の始まりは1907年に枕木用材を確保するために天塩の山林を購入したのに始まります。坂口茂次郎は山林をなによりも大切にし「木材業に携わる者は木を採るばかりでなく伐採した以上に木を育てるのが仕事だ」と社員に教え、山林を良好な状態に保つための努力を惜しみませんでした。

木からつくる〜ミズナラボトル

新宮商行には山林部のほか、日本で初めてチェンソー(米マッカラー社)を輸入し、農林業従事者を含めた幅広い方々に愛用いただく商品提供する機械部と、集成材・防腐加工材・木質系住宅部材などを扱う木材部があります。

木材部では輸入製材の販売など、そして銭函工場においては合板の製造から始まり、ランバーコア合板を経て、現在は木質住宅用部材向け、化粧貼り集成材、住宅用内装パネル、住宅用以外の製品として、薪、木皿、ミズナラボトル、三角テーブル、オークパーテーションなどを「新宮商行wood shop」(オンライン)でも販売しております。
https://shingushoko.theshop.jp

その中で、木材部において、「木を扱っているウチでも何かつくれないか?」と企画研究室を中心に、社内の自社製品企画プロジェクトが立ち上がりました。形になるまで1年近くを要し製品化されたのが「ミズナラボトル」。
ウイスキーを熟成させる樽一般的なのはオーク材ですが、オーク樽以上に繊細な風味づけと熟成ができるとウイスキー通の間でもミズナラは話題でした。まさに「木とともに歩んできた」新宮商行ならではの開発商品でした。(全て手作業のため、ひとつの商品製作まで約1ヶ月必要とされることから量産化は難しく、今後の展開は未定となっています)
「2週間くらいボトルの中に入れて熟成させると、色が濃くなり、深みが増して味がまろやかになります。評判も上々のようです」

山林経営が会社の精神的なバックグラウンドとして今も息づいているように、新宮商行は手に触れる「木」の質を大事にしたいと考え、質感の高い木質内装材を通じて住宅づくりに貢献しています。


小西茂雄 木材部銭函工場工場長
大居 崇 木材部銭函工場生産課課長

参考文献
株式会社新宮商行100年史
北海道山林史(北海道/北海道山林史編纂委員会編1953年)
神戸大学経済経営研究所新聞記事文庫/時事新報1922年

株式会社新宮商行
銭函工場
〒047-0261
北海道小樽市銭函2丁目32番1号
TEL0134-62-2011

本店
〒047-0032
北海道小樽市稲穂2丁目1-1
TEL0134-24-1311(代)

本社
〒135-0016
東京都江東区東陽2丁目4-2新宮ビル5階
TEL03-3649-7131(代)
https://www.shingu-shoko.co.jp

1906年設立。創業以来、木の文化の素晴らしさを伝え、「木」の川上から川下までをトータルにサポート。
原材料、加工、木製ドアの製作、薪ストーブの販売など「木」に関する幅広い事業を展開。